航海7
男が、いや、一人の少年が息を切らしながら走っている。この時代では珍しく、髪の色を染めているのか、または脱色しているのかは定かではないが、白髪の少年だ。瞳の色は一般の人と同じで黒だ。
「……ハッ、ハッ、ハッ……」
汗を多量にかいている割には規則正しい呼吸だ。
ひとけ人気の無い路地に入り込む、が前方には男達三人が道をふさ塞いでいた。
それを見た少年は脇の小道に逃げ込んだ。
しかし、行く手を阻む凶悪な人相の男が二人。
慌てて後ろを振り返るが、来た道も先程の男達に塞がれてしまった。
男達は白髪の少年との距離をゆっくりと詰めてくる。
「さぁ〜て。もう逃げ道はないぞ、坊ぉぉぉ主」
「……ウッ、ウゥゥゥ…」
男の一人が進み出て少年の耳元で囁く。
「金目のものをだしてもらおうか」
低く、威圧的な声だ。
少年は愛想笑いを浮かべ、頭を掻きながら、
「い、いやぁ、ぼ、僕はそんなものは……」
少年の耳元で囁いていた男は、突然馬鹿でかい声で叫ぶ。
「とっとと出せって言ってんだよっ!」
「ヒイッ!」
少年は情けない声を小さくあげた。
男達の表情を上目使いでチラリと見る。金目のものを出さなければどうなるかわかったものではない。
弱肉強食。
強くなければ、このように逆らわずに相手に従って生きていくしかない。
少年は渋々ながら金目のものを男達に渡そうとした。
その様子を塀の上から一人の金髪へきがん碧眼の少女が見下ろしていた。
「……ふ〜ん、白髪の少年ねぇ……お金持ってそうだし、恩を売っておくのもいいかもね……」
今の時代では髪の色を染めたり、脱色したりするのは裕福な者達にしか出来ないことだ。