航海3
このことに対する批判はクロノス内部でも数多いが、生き残った人類全体の為には必須な『必要悪』と唱える学者もいる。
この組織に真っ向から対立するのが『レジスタンス』。
『クロノス』の圧政からの解放を目指して興された組織だ。かなり大規模な勢力ではあるが『クロノス』の組織力には及ばず、現在は力を蓄えている状況、と言えるだろう。
この二つの勢力がしばしば衝突することはあったが、大規模な戦闘が行われたことは無い。
これは、『クロノス』としても『レジスタンス』としても、両者が真っ向から戦争を行うと、組織うんぬん云々といったことを通り越して、人類全体が二度と立ち上がれない程のダメージを負ってしまうのでは、という懸念が両者にある為だ。
この二つの組織が真っ正面から衝突した時こそ、人類がこの地球上から消滅する時なのかもしれない。
「前途多難、というより、お先真っ暗、という表現の方が正しいな」
(……人類はこのまま滅亡してしまうのかもな……)
その考えは口にせず、男は人工合成のコーヒーを一気に飲みほし、通信機を手に取る。
「バーンハルトだ。マートン大佐を頼む」
通信機の向こう側からは『マートン』なる人物を呼ぶ声が微かに聞こえてくる。
「バーンハルト少佐、お待たせしました。マートン大佐にお代わり致します。」
「マートンだ。用件は?」
「はっ!前回に続き、レポートの提出を…」
マートンは毒づいて、
「フンッ!どうせ『引き続き調査』と言うのだろう!この無能共が!なにが『千の頭脳を持つ男サウザウンドヘッド』だ!」